本ガイドラインは、小学生年代のサッカー活動における安全確保の普及・推進を目的として作成したものです。
作成にあたっては、公益財団法人日本サッカー協会(JFA)、公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)、環境省、消防庁等が公表する熱中症・落雷・安全管理に関する指針を参考とし、小学生年代のサッカー現場で実践しやすい形に整理しています。
なお、本ガイドラインは法令や公的基準に代わるものではありません。
実際の活動においては、各自治体、競技団体、大会主催者が定める基準を優先し、そのうえで安全確保に努めてください。
私たち大人が、子どもたちの活動に潜む危険を知り、学び、備え続けること。
そして、子どもたちの安全と健やかな成長を支えること。
それは、社会における大人の共通責任かもしれません。
本ガイドラインでは、安全管理上の判断を以下の3区分で示します。
【🟢 推奨】
安全性向上のため実施が望ましい事項
【🟠 必須】
安全管理上必ず実施すべき事項
【🔴 中止基準】
活動を継続してはならない状態
⸻
小学生年代のサッカーは育成年代スポーツです。
勝利や結果、大会運営よりも優先されるべきものは、子どもたちの生命・健康・成長です。
安全は競技の妨げではありません。
安全は子どもたちがスポーツを楽しみ、成長し、生涯にわたってサッカーと関わるための土台です。
監督・コーチ・保護者・大会主催者・運営者は、「熱中症や事故を起こさせない」という共通の責任を持ちます。


⸻
【🟠 必須】
すべての大人は以下を理解する。
・体温調節機能が未成熟
・発汗能力が低い
・熱が体内にこもりやすい
・自ら危険を判断しにくい
・無理を続けやすい
【🟢 推奨】
保護者説明会やチームミーティングで共有する。
⸻
暑熱順化とは、身体を暑さに慣らすことです。
【🟢 推奨】
・4月から開始
・5〜14日程度かけて実施
・段階的に運動量を増やす
・適度な発汗習慣をつくる
・入浴習慣を整える
【🟠 必須】
急激な暑熱環境への移行を避ける。
【🔴 中止基準】
暑熱順化が十分でない状態での長時間活動。
⸻
睡眠不足は熱中症リスクを著しく高めます。
【🟠 必須】
試合前日に十分な睡眠時間を確保する。
【🟢 推奨】
・低学年:9〜11時間
・高学年:8〜10時間
【🔴 中止基準】
以下の場合は参加見合わせを検討する。
・極端な睡眠不足
・徹夜状態
・著しい疲労
⸻
【🟠 必須】
活動前の朝食摂取。
【🟢 推奨】
・おにぎり
・パン
・うどん
・バナナ
・味噌汁
など消化の良い食品を摂取する。
【🔴 中止基準】
体調不良により十分な食事・水分摂取ができない場合。
⸻
運動前から身体を冷やし深部体温上昇を抑制する。
【🟢 推奨】
・アイスベスト
・冷却タオル
・冷感帽子
・日陰待機
・手掌冷却
【🟠 必須】
WBGT高値時は冷却環境を準備する。
⸻

【🟠 必須】
喉が渇く前の補給。
【🟠 必須】
給水機会の確保。
【🟢 推奨】
・スポーツドリンク
・経口補水液
・常温水の準備
【🔴 中止基準】
十分な給水環境を確保できない場合。
⸻
WBGT(暑さ指数)を活動判断の基準とする。
【🟠 必須】
活動場所でのWBGT測定。
通常活動
警戒
給水頻度増加
厳重警戒
活動時間短縮
クーリングブレイク実施
危険
原則中止
【🔴 中止基準】
・WBGT31℃以上
・救護体制不足
・体調不良者の増加
・人工芝高温化
・連戦による疲労蓄積
※数値のみでなく総合判断を行う。
⸻
【🟠 必須】
・WBGT測定
・AED設置
・救護体制整備
・中止基準策定
・避難場所確保
【🟢 推奨】
・ミストファン
・日陰テント
・看護師配置
⸻
落雷は数秒で生命を奪う危険があります。
【🟠 必須】
雷活動(雷光・雷鳴)確認時は即時中断。
【🟠 必須】
建物または自動車へ避難。
【🔴 中止基準】
雷活動を確認した場合。
【🔴 再開禁止】
最後の雷活動から30分未満。
避難先として以下は不適切です。
・樹木の下
・テント
・東屋
・ベンチ
⸻
【🟠 必須】
以下の変化を見逃さない。
・走れない
・反応が鈍い
・頭痛
・めまい
・顔色不良
・不機嫌
・吐き気
異変を感じたら即座に休ませる。
⸻
熱中症が疑われる場合は、「様子を見る」のではなく、迅速な対応を行う。
重症熱中症は命に関わる緊急事態であり、救急隊到着前の初期対応が予後を大きく左右する。
⸻
【🟠 必須】
選手に異変を感じたら直ちにプレーを中止する。
本人が「大丈夫」と言っても続行させない。
⸻
日陰や空調の効いた室内へ移動する。
人工芝やアスファルトなど高温の場所から速やかに離れる。
⸻
以下を確認する。
・呼びかけに応答するか
・会話が成立するか
・呼吸は正常か
次の症状がある場合は重症を疑う。
・意識がはっきりしない
・受け答えがおかしい
・まっすぐ歩けない
・けいれん
・呼吸異常
⸻
重症が疑われる場合は直ちに119番通報する。
通報時には以下を伝える。
・場所
・年齢
・症状
・意識の有無
・熱中症疑いであること
⸻
AEDを準備する。
救急隊到着までの役割を分担する。
例
・通報担当
・冷却担当
・AED担当
・保護者連絡担当
⸻
救急車を待つだけではなく、直ちに冷却を開始する。
重点的に冷やす部位
・首の両側
・脇の下
・足の付け根(鼠径部)
利用できるもの
・氷嚢
・アイスパック
・氷水
・濡れタオル
可能であれば、
・衣服を緩める
・風を送る
・ミストを使用する
などを併用し、体温を下げる。
⸻
到着した救急隊へ以下を伝える。
・発症時刻
・症状の経過
・実施した応急処置
・飲水状況
・既往歴(分かる範囲)
⸻
【🔴 禁止】
以下は行わない。
・意識障害時の飲水
・無理な経口補水
・競技への再参加
・「少し休めば大丈夫」という自己判断
⸻
【🔴 緊急搬送を要する症状】
次の症状がある場合は重症熱中症を疑い、直ちに救急要請する。
・意識障害
・けいれん
・歩行困難
・呼吸異常
・反応が著しく鈍い
・嘔吐を繰り返す
・自力で水分摂取できない
「迷ったら救急要請」が原則である。
⸻
熱中症症状が発生した場合は、症状の軽重にかかわらず慎重な対応を行う。
症状が改善したように見えても、体内では脱水や体温調節機能の低下が残っている場合がある。
再発や重症化を防ぐため、段階的な復帰を原則とする。
⸻
【🟠 必須】
熱中症症状が認められた選手は、その日の練習・試合への復帰を認めない。
以下の場合も同様とする。
・頭痛
・めまい
・吐き気
・足のけいれん
・強い疲労感
本人が「大丈夫」と訴えても復帰させない。
⸻
指導者は症状の内容と対応経過を保護者へ伝える。
・発症時刻
・症状
・実施した対応
・水分補給状況
を共有する。
⸻
活動終了後も体調変化に注意する。
以下の症状が現れた場合は医療機関を受診する。
・発熱
・頭痛
・嘔吐
・倦怠感
・食欲不振
⸻
【🟢 推奨】
中等度以上の症状が疑われる場合は医療機関を受診する。
症状消失後は段階的に活動量を増やす。
例
・第1段階
散歩・ストレッチ
↓
・第2段階
軽いジョギング
↓
・第3段階
通常練習の一部参加
↓
・第4段階
通常練習
↓
・第5段階
試合復帰
⸻
【🔴 禁止】
・当日の競技復帰
・症状を隠しての参加
・指導者の自己判断による復帰許可
・保護者への未報告
⸻
【🔴 医療機関受診を強く推奨する症状】
・意識障害
・けいれん
・繰り返す嘔吐
・歩行困難
・高熱
・翌日以降も症状が続く場合
⸻
小学生は体調変化を十分に説明できない場合がある。
また、
「試合に出たい」
「レギュラーを外れたくない」
という気持ちから、体調不良を我慢することも少なくない。
大人は子どもの訴えを軽視せず、安全を最優先に判断する。

⸻
【🟠 必須】
以下の発言があった場合は必ず状態を確認する。
・暑い
・苦しい
・気持ち悪い
・頭が痛い
・足がつった
・疲れた
・休みたい
⸻
訴えがあった場合は一旦プレーを中断する。
無理に続けさせない。
⸻
・顔色
・発汗状態
・受け答え
・歩行状態
を確認する。
⸻
体調変化があった場合は活動後に保護者へ共有する。
⸻
【🟢 推奨】
指導者は普段から
「苦しかったら言っていい」
「休みたいと言っていい」
という雰囲気づくりを行う。
⸻
熱中症の初期症状や危険サインを年齢に応じて伝える。
⸻
【🔴 禁止】
・根性論による継続強要
・「みんな頑張っている」
・「あと少しだから」
・「試合中だから」
・「大丈夫だろう」
という理由で活動を続けさせること
⸻
【🔴 危険なサイン】
以下の場合は熱中症を疑い直ちに対応する。
・急に走れなくなった
・ぼんやりしている
・返事がおかしい
・ふらつく
・泣き出す
・座り込む
・頭を抱える
子どもの異変は、本人の訴えよりも先に行動や表情に現れることがある。
⸻

■ 監督・コーチ
□ WBGT確認
□ 給水管理
□ 選手観察
□ 活動中止判断
□ 落雷確認
□ AED確認
■ 保護者
□ 睡眠確認
□ 朝食確認
□ 水分準備
□ 冷却用品準備
□ 体調確認
■ 大会主催者
□ WBGT測定
□ 救護体制
□ AED
□ 避難場所
□ クーリングブレイク
□ 落雷対応
□ 中断・中止の判断と決断
⸻

子どもたちは、自分自身の危険を正確に判断できるとは限りません。
だからこそ、大人が学び、大人が備え、大人が決断する必要があります。
安全は競技の妨げではありません。
安全は、子どもたちがサッカーを楽しみ、成長し、生涯にわたってスポーツに親しむための土台です。
私たちは勝利より先に、子どもの命と未来を守ります。
それが小学生年代のサッカーに関わるすべての大人の役割です。
とはいえ、
私たちは答えを持っているわけではありません。
だからこそ学び続け、問い続け、皆さまと考え続けたいと思います。
子どもたちが安全・安心にスポーツを楽しみ、その先の人生を豊かに歩んでいける環境づくりのために。
KAKU SPORTS OFFICEは、これからも知識や情報の発信を通じて、その一助となることを目指します。
私たちは、子どもたちの生命と健康を守ることを、スポーツ環境づくりの出発点と考えます。
私たちは、知識や情報の発信を通じて、安全について学び、考え、行動するきっかけを届け続けます。
私たちは、指導者、保護者、大会主催者、地域の皆さまとともに、
「本当に安全なスポーツ環境とは何か」を問い続けます。
子どもたちが安全・安心にスポーツを楽しみ、その先の人生を豊かに歩んでいける環境づくりの一助となること。
それが、KAKU SPORTS OFFICEの願いです。
そして、その願いを皆さまと共有し、ともに実現していくことを目指します。
本ガイドラインは、以下の公的機関・競技団体等が公表する資料を参考に作成しています・
・熱中症対策ガイドライン https://www.jfa.jp/documents/pdf/other/heatstroke_guideline.pdf
・落雷事故防止対策 https://www.jfa.jp/documents/pdf/other/rakurai.pdf
・大会ガイドライン https://www.jfa.jp/documents/guideline/
・熱中症予防に関する基本情報 https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid523.html
・熱中症予防運動指針 https://www.japan-sports.or.jp/medicine/heatstroke/tabid922.html
・熱中症予防情報サイト https://www.wbgt.env.go.jp/
・暑さ指数(WBGT)活用指針 https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php
・学校及び地域スポーツ活動における熱中症事故防止通知 https://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/anzen/1417343_00033.htm
・熱中症による救急搬送状況 https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/post1.html
・応急手当普及啓発資料 https://www.fdma.go.jp/pressrelease/houdou/items/h23/2308/230831_1houdou/01_okyu.pdf
・雷ナウキャスト(リンク)
・防災気象情報 (リンク)
・熱中症診療ガイドライン (リンク)
・Extreme Heat Guidelines (リンク)
・Consensus Statement on Exercise in the Heat (リンク)
※本ガイドラインは2026年6月時点の情報に基づき作成している。
※各団体が公表する最新資料を随時確認し、必要に応じて改訂を行うものとする。
ーーーーー
本記事に関するご質問やご相談は、下記までご連絡ください。
Website: https://kakusportsoffice.com/
Mail: contact@kakusportsoffice.com
アスリート思考で心豊かな社会づくりをクリエイトする
「アスリート思考で心豊かな社会を創造する」をモットーに、競技スポーツに関わる個人・企業・団体の活動や事業を、的確な視点で分析します。そして、言語・文化・音楽・映像・活字といった多様な“シンボル”を活用し、人と人、組織と組織、企業と企業、人と組織・企業といったあらゆるつながりの中から、最大の相乗効果を生み出す組み合わせをコーディネート。新たな利益システムを構築するコミュニケーションコーディネーターとして活動しています。
また、創業者・企画者としての精神をもとに、理念や目的を共有できるパートナーの育成や、持続的かつ自走可能な組織づくりを支援するシステムコーディネーターとしても貢献。さらに、競技者一人ひとりが本来持つ力を引き出すメンターとして、競技スポーツの発展にも寄与しています。