活 動

日本水球は、世界最先端の競争構造に適応できているのか? ――代表チームではなく「国内競技環境」から国際競技力を問い直す

2026.01.18

日本水球の国際競技力について語る時に、私たちはまず「日本代表は世界でどこまで戦えているのか」という結果に目を向けます。

しかし、本当にそれだけで語り尽くせるのでしょうか。

本記事は、日本水球の国際競技力を「代表チームの問題」としてではなく、「国内競技環境全体の構造」から捉え直す試みです。

答えを示すことが目的ではありません。

この文章が、日本水球の現在地と未来について、自由に語り合うための入口になれば幸いです。

世界の中の日本水球

――日本水球は、本当に「世界から離れている」のか?

水球は1900年のパリオリンピック以降、すべての夏季オリンピックで正式種目として実施されてきた、水泳競技(Aquatics)を代表する水上のボールゲームです。

国際水球の主要大会には、4年に1度のオリンピック、2年に1度の世界選手権があります。

これらの舞台では、欧州諸国を中心とした水球先進国が、長年にわたり世界の頂点を争ってきました。

一方、日本はアジアを代表する存在でありながら、世界大会での上位進出には高い壁があるのが現状です。

ただし、結果だけを見て「日本は弱い」と言い切ってしまってよいのか。

本当に見つめるべきものは、結果の背後にある競技環境なのかもしれません。

日本代表チームの国際大会成績

――この順位は、何を映し出しているのか?

女子日本代表

•パリオリンピック2024:大陸最終予選不参加 (リンク)

•世界選手権2025:8位

(1位 GRE/ 2位 HUN/ 3位 ESP/ 4位 USA / 5位 NED/ 6位 AUS/ 7位 ITA/8位JPN)

男子日本代表

•パリオリンピック2024:11位

(1SRB/ 2CRO/ 3USA/ 4HUN / 5GRE/ 6ESP/ 7ITA/8AUS)

•世界選手権2025:9位

(1ESP/ 2HUN/ 3GRE/ 4SRB/ 5CRO/ 6MNE/ 7ITA/ 8USA)

これらの順位は、日本水球の「現在地」を示す重要な指標です。

しかし同時に、こうした結果は、選手個人の能力だけでなく、その選手が育ってきた環境の総和でもあります。

この順位は、「代表チームの力」だけを映しているのでしょうか。

それとも、「国内競技環境の構造」を映し出しているのでしょうか。

日本代表チームの編成と強化

――代表強化は、どこから始まっているのか?

日本代表チームは、(公財)日本水泳連盟によって編成され、強化・派遣が行われています。

代表活動は、日本水球の最前線であり、最も注目を集める舞台です。

しかし、代表チームは突然生まれる存在ではありません。

そこに至るまでの育成指導、競技会、日常のトレーニングが長い時間をかけて積み重なっています。

代表強化は、国内競技環境の延長線上にあるという視点を忘れてはいけないのかもしれません。

日本水球の育成構造

――日本の競技環境は、誰のために設計されているのか?

日本水球は、学生スポーツとして発展してきた歴史があります。

小・中・高のスポーツ少年団や学校部活動、地域クラブ、そして大学へと続く競技構造は、日本独自の文化とも言えます。

一方で、大学卒業後の競技環境は厳しく、ハイパフォーマンスと生涯スポーツの間に大きな空白が生まれやすい構造でもあります。

この競技環境は、国際舞台で戦い続ける選手を育てる設計になっているのでしょうか。

それとも、別の価値を優先してきた結果なのでしょうか。

水球先進国の競技環境

――世界の強豪国は、どこで選手を育成し、強化されているのか?

欧州の水球先進国では、通年型のプロリーグが存在し、選手はクラブ単位で日常的に高強度の試合と競争にさらされています。

代表活動は特別な時間ですが、選手強化の中心は、クラブの日常にあります。

この違いは、日本水球の国際競技力にどのような影響を与えているのでしょうか。

日本国内競技会の現状

――私たちの大会は、何を育てているのか?

日本の競技会は、地域予選を勝ち抜き、短期間の全国大会で順位を決める形式が中心です。

短期決戦ならではの緊張感や集中力は、日本水球の強みでもあります。

一方で、この競技会構造は国際基準の経験値を積み重ねる場として十分に機能しているでしょうか。

海外リーグに挑戦する日本人選手

――なぜ彼らは、海を渡るのか?

近年、欧州の水球リーグに所属し、ハイパフォーマンス環境でプレーする日本人選手が増えています。

言語も文化も異なる環境での挑戦は、大きな勇気と覚悟を伴います。

その選択は、日本水球の競技環境が抱える課題を静かに問いかけているようにも見えます。

LA28(2028年オリンピック ロスアンゼルス大会)に向けて

――目標達成の鍵は、どこにあるのか?

日本水泳連盟の中期計画では、

•男子:ロサンゼルス2028 ベスト8

•女子:ロサンゼルス2028 出場

という目標が掲げられています。

この目標は、代表チームだけの努力で達成できるものなのでしょうか。

それとも、国内競技環境全体の変化があってこそ、現実味を帯びるものなのでしょうか。

おわりに

日本水球の国際競技力とは、代表チームだけの問題ではありません。

それは、日々の練習環境、競技会のあり方、選手のキャリア、地域の活動。

そして、それらを支える人々すべての積み重ねです。

私たちの国内競技環境は、本当に「世界の最先端で戦い続ける日本水球」を支える構造になっているのか。

この問いについて、ぜひ皆さんと語り合っていけたらと思います。

 

🔗関連記事

水球って、どんなスポーツ? ──小学生年代(A区分)のゲーム環境を考える。子どもたちが将来に向けて大きく成長していくために小学生の水球のあり方についての提言

コメント・シェアのお願い

日本水球の国際競技力向上についてのお考え、取り組みなどを、ぜひコメントで教えてください。

この記事が、世界と戦い続ける水球日本代表の発展についての対話につながることを期待しています。

お問い合わせフォーム

スポーツシステムコーディネーター 角田壮監

「競技者本来の力を引き出す」ためにを理念に、グローバルシーンで実績を残している様々な競技のトップアスリートや競技団体のマネジメントやディレクションで培った「競技力向上のための組織づくり」をはじめ、社会にスポーツが持つ有益な効果を生み出すためにスポーツシステムコーディネーター、スポーツプロデューサー、プロジェクトコンサルタントとして、次世代ニーズを見据えた魅力ある競技スポーツシーンの創出に努めている。

KAKU SPORTS OFFICE MISSION

アスリート思考で心豊かな社会づくりをクリエイトする

KAKU SPORTS OFFICEは、「アスリート思考で心豊かな社会を創造する」をモットーに、競技スポーツに関わる個人・企業・団体の活動や事業を、的確な視点で分析します。そして、言語・文化・音楽・映像・活字といった多様な“シンボル”を活用し、人と人、組織と組織、企業と企業、人と組織・企業といったあらゆるつながりの中から、最大の相乗効果を生み出す組み合わせをコーディネート。新たな利益システムを構築するコミュニケーションコーディネーターとして活動しています。また、創業者・企画者としての精神をもとに、理念や目的を共有できるパートナーの育成や、持続的かつ自走可能な組織づくりを支援するシステムコーディネーターとしても貢献。さらに、競技者一人ひとりが本来持つ力を引き出すメンターとして、競技スポーツの発展にも寄与しています

POST