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水球って、どんなスポーツ? いまこそ語り合いたい──水中に潜む「反フェアプレー」を撲滅 ──“フェアプレーの精神をどう育てるか”。 これは日本水球界が避けては通れない、大切な問いである

2025.12.09

水球って、どんなスポーツ?いまこそ語り合いたい──水中に潜む「反フェアプレー」の撲滅

水球は、その迫力や身体的なコンタクトの激しさから「水中の格闘技」と呼ばれてきました。しかし、この表現は水球というスポーツの“本質”を曇らせてしまう可能性があります。KAKU SPORTS OFFICE は、水球を身体的コンタクトの激しさで語るのではなく、「タフでフェア・クリエイティブな水上のボールゲーム」と表現してきました。そしていま改めて、私たちが向き合うべきテーマがあります。──“フェアプレーの精神をどう育てるか”。

これは日本水球界が避けては通れない、大切な問いです。

水球は「水上のボールゲーム」である

水球は、水上でゴールを奪い合うチームスポーツです。しかし、その成立には極めて高度な身体技術が求められます。

•水中での移動

•停止と方向転換

•上半身を高く水面上に引き上げる動作

•相手との攻防を制するための行動

•ボールを扱う繊細な感覚

•攻守に渡る主体的且つ調和のバランス感覚

これらすべてを同時に行うには、

技術・戦術・身体能力・精神力の総合的な鍛錬

が必要です。

水球は「知恵と創造性、決断のスポーツ」であり、そこに本来の魅力があります。

水中に潜む「反フェアプレー」という構造的課題

水球は“水上のボールゲーム”ですが、選手の身体の多くは水中にあります。これが大きな問題を生みます。

■ レフェリーが見えない

水中で起きる「不正行為」は、レフェリーにとって視認が難しい。

■ 観客席からも見えない

観客には、水中で何が起きているのかが分かりにくい。

■ その結果──「見えない反則」が技術の一部になる

本来排除されるべき行為が

“技術の延長”として扱われてしまう危険性があります。

それは次のような弊害を生みます。

•コート内でのトラブル

•コート外での紛争

•水球の魅力の誤解

•新規プレーヤーの減少

•競技発展の停滞

この負の連鎖を断ち切るには、“フェアプレーの再定義”が不可欠です。

レフェリーへの敬意・ルールの尊重──その重要性

国内の主要大会では、反則や懲罰への不服から、監督やコーチによる過剰な抗議や暴言がレフェリーに向けられる場面が少なくありません。

さらに、その影響はトップカテゴリーだけでなく

小学生年代の大会にまで及んでいます。

若いレフェリーの中には、

「水球界の重鎮とされる指導者からの強い言葉に恐怖を感じた」

と語る人もいます。

スポーツパーソンシップの基盤である

“レフェリーへの敬意”と“ルールの尊重”  が揺らぐと、フェアプレー文化は根づきません。

映像技術の進化が、水球を変え始めている

近年、競泳・飛込・アーティスティックスイミングと同様、水球でも中継技術が飛躍的に進化しました。

水中映像が明瞭に映し出されることで、

これまで見えなかった反則が可視化されつつあります。

水球界はテクノロジーを活用し、

“見えない不正を見逃さない”

という方向に進み始めています。

これは、水球をよりフェアで魅力あるスポーツに進化させる大きな力になるはずです。

フェアプレーの精神が、水球を希望ある未来へ導く

フェアプレーとは何か。広辞苑はこう定義します。

(1)正々堂々たるふるまい

(2)公明正大な行為・態度

(広辞苑第六版)

スポーツにはルールがあり、それを守ることでアスリート同士が互いの力を引き出し合う。

これはスポーツマンシップであり、オリンピズムの根幹です。

オリンピック憲章も述べています。

「友情、連携、フェアプレーに基づく相互理解が必須である」

(オリンピズムの根本原則より)

公益財団法人日本オリンピック委員会_TEAM JAPAN

よくある声:「反則を厳しく取ると水球がおもしろくなくなる?」

日本水球界では、時折このような声を聞きます。

「レフェリーが厳しく反則を取ると、水球の醍醐味が消える」

しかし、ここで改めて問いたいのです。

なぜ、ルールがあるのか?

なぜ、ルールブックにレフェリーが記述されているのか?

この問いに向き合うことこそ、

日本水球が前進する最重要のヒント だと考えています。

他競技から学ぶ──日本サッカー協会(JFA)の「リスペクト・フェアプレー」

日本サッカー協会は、2008年から「リスペクトプロジェクト」を開始しました。

その理念は明確です。

“フェアで強い日本をつくる”

そして、フェアプレーの本質を以下のように整理しています。

•ルール理解と遵守

•ルールの精神(安全・公平・喜び)

•レフェリーへの敬意

•相手チームへの敬意

さらに画期的だったのが

「グリーンカード」制度(U-12以下)。

“ポジティブな行動”を称える仕組みであり、

•怪我をした相手への思いやり

•ファウル後の謝罪

•自己申告

•味方の暴走を止める行動

•レフェリーへの協力姿勢

こうした行為を“賞賛する文化”をつくったことで、日本サッカー界では”フェアプレーの精神を育む活動”が確実に根づいています。

公益財団法人日本サッカー協会_リスペクト宣言

フェアプレー」とは

  • ルールを正確に理解し、守る
    フェアプレーの基本はルールをしっかりと知った上で、それを守ろうと努力することである。
  • ルールの精神:安全・公平・喜び
    ルールは、自分も他人もけがをしないで安全にプレーできること、両チーム、選手に公平であること、みんなが楽しくプレーできることを意図して作られているのである。
  • レフェリーに敬意を払う
    審判は両チームがルールに従って公平に競技ができるために頼んだ人である。人間である以上ミスもするだろうが、最終判断を任せた人なのだから、審判を信頼し、その判断を尊重しなければならない。
  • 相手に敬意を払う
    相手チームの選手は「敵」ではない。サッカーを楽しむ大切な「仲間」である。仲間にけがをさせるようなプレーは絶対にしてはならないことである。

JFAサッカー行動規範

  • 最善の努力
    どんな状況でも、勝利のため、またひとつのゴールのために、最後まで全力を尽してプレーする。
  • フェアプレー
    フェアプレーの精神を理解し、あらゆる面でフェアな行動を心がける。
  • ルールの遵守
    ルールを守り、ルールの精神に従って行動する。
  • 相手の尊重
    対戦チームのプレーヤーや、レフェリーなどにも、友情と尊敬をもって接する。
  • 勝敗の受容
    勝利のときに慎みを忘れず、また敗戦も、誇りある態度で受け入れる。
  • 仲間の拡大
    サッカーの仲間を増やすことに努める。
  • 環境の改善
    サッカーの環境をより良いものとするために努力する。
  • 責任ある行動
    社会の一員として、責任ある態度と行動をとる。
  • 健全な経済感覚
    あらゆる面で健全な経済感覚のもとに行動する。
  • 社会悪との戦い
    薬物の乱用・差別などのスポーツの健全な発展を脅かす社会悪に対し、断固として戦う。
  • 感謝と喜び
    常に感謝と喜びの気持ちをもってサッカーに関わる。

水球界にとってのロールモデル

サッカーが築いた価値観は、そのまま水球にも応用できます。

•ルールの精神を共有する文化

•レフェリーを尊重する風土

•ポジティブ行動を称える仕組み

•フェアであることを“かっこいい”とする価値観

これは、水球界がいま必要としている方向性と完全に一致しています。

「フェアで強く・クリエイティブな日本水球」へ

水球は、本来クリエイティブで、美しく、思考と技術が交差するスポーツです。

だからこそ、

“反フェアプレーの撲滅”は、水球の未来を明るくする最大のチャンスです。

•選手

•指導者

•レフェリー

•そして競技を愛するすべての人

このテーマを語り合い、行動するべきタイミングは──

まさに「いま」です。

■ 最後に

この記事についてのご意見・ご感想をぜひお寄せください。

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スポーツシステムコーディネーター 角田壮監

「競技者本来の力を引き出す」ためにを理念に、グローバルシーンで実績を残している様々な競技のトップアスリートや競技団体のマネジメントやディレクションで培った「競技力向上のための組織づくり」をはじめ、社会にスポーツが持つ有益な効果を生み出すためにスポーツシステムコーディネーター、スポーツプロデューサー、プロジェクトコンサルタントとして、次世代ニーズを見据えた魅力ある競技スポーツシーンの創出に努めている。

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アスリート思考で心豊かな社会づくりをクリエイトする

KAKU SPORTS OFFICEは、「アスリート思考で心豊かな社会を創造する」をモットーに、競技スポーツに関わる個人・企業・団体の活動や事業を、的確な視点で分析します。そして、言語・文化・音楽・映像・活字といった多様な“シンボル”を活用し、人と人、組織と組織、企業と企業、人と組織・企業といったあらゆるつながりの中から、最大の相乗効果を生み出す組み合わせをコーディネート。新たな利益システムを構築するコミュニケーションコーディネーターとして活動しています。また、創業者・企画者としての精神をもとに、理念や目的を共有できるパートナーの育成や、持続的かつ自走可能な組織づくりを支援するシステムコーディネーターとしても貢献。さらに、競技者一人ひとりが本来持つ力を引き出すメンターとして、競技スポーツの発展にも寄与しています。

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