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水球って、どんなスポーツ?⸻水球のボールについて ”今日も、ボールから目が離せない。”

2025.10.27

水球を水中の格闘技から、“水上のボールゲーム”へ

KAKU SPORTS OFFICEでは、新時代の水球を「水中の格闘技」から「水上のボールゲーム」へと再定義し、その普及を進めています。今回は、水球というスポーツの中心に存在する「ボール」に焦点を当ててみましょう。

水中の格闘技から、“水上のボールゲーム”へ

水球(”Water Polo”)はこれまで「水中の格闘技」と呼ばれてきました。

それは、激しい接触や肉体的ぶつかり合いが主眼のように見えるシーンが多かったからかもしれません。けれど、私たちはそこに問いかけます。

本当にそれが、水球の本質でしょうか?

私たちは、新時代の水球を**タフでフェア、クリエイティブな水上のボールゲーム**と再定義します。

今回は、水上のボールゲームである**水球の中心に存在する「ボール」に焦点**を当ててみました。

世界が認める水球ボール──MIKASAの挑戦

2022年、国際水泳連盟(現 World Aquatics)の公認球MIKASA 「WP550C」と「WP440C」が登場しました。ここで、株式会社ミカサが掲げるブランドステイトメントをご紹介します。

いつも、ボールは先へ行く。

勝負を決めようと、劣勢をはね返そうと、夢中で追いかけるプレイヤーの先を。

固唾を呑んで、ポイントの行方を見守る観衆の視線の先を。

そして、ボールがその動きを止めるとき、沸き起こる歓声や感動の嵐。

闘志や熱狂、感動の常に先を走り、筋書きのないドラマを紡いでいく。

私たちMIKASAは感じる。

そんなプレイヤーの感情を駆り立て、観客を熱狂させるボールに魂を吹き込む仕事に携われる幸せを。

今日も、ボールから目が離せない。

株式会社ミカサ ブランドステイトメント(公式サイトより)

バレーボール、サッカー、バスケットボールなど、あらゆるボールゲームの進化を支えてきたミカサ。

その哲学は、「ボールを通じてスポーツ文化を豊かにする」という価値観に貫かれています。

■ “水中の格闘技”から水上のボールゲームへの転換点

これまでの日本水球界では、“水中の格闘技”という価値を前面に打ち出し、普及・育成・強化・指導者養成が進められてきた傾向があります。また、観る人、支える人、語る人の視点も水中の格闘技でした。

その背景には、体格やパワー、フィジカルコンタクトが注目され、見えない水中での蹴り合いや掴み合いが戦術の一部として認識されてきた歴史があります。

しかし、水球は本来、**「水上のボールゲーム」**です。

ボールの存在を中心に捉え直すことで、競技の本質的な価値、技術・戦術の発展、そして観る楽しみの広がりへとつながっていくのではないでしょうか。

■ 競技規則にみる「ボールの条件」

『水球ハンドブック2023』(日本水泳連盟)によると、競技で使用するボールは次のように定められています。

第1条 競技場と用具(抜粋)

1.1 フィールドエリア、ゴール、ボールおよびその他の設備は付則4に準じる。

附則4(抜粋)

•ボールは球状で、自動閉鎖弁付きの空気室を有すること。

•防水性があり、外部の縫い目やグリース状コーティングがあってはならない。

•重量:400g~450g

•外周および空気圧:

 男子用:68〜71cm、7.5〜8.5PSI

 女子用:65〜67cm、6.5〜7.5PSI

■ ジュニア水球のボール規格

P80に記載の「ジュニア水球規則」では、年齢区分に応じてボールサイズや空気圧が定められています。

区分

対象

外周

重量

空気圧

A区分

12歳以下男女

5860cm

300320g

5.56.5 PSI

B区分

15歳以下男子

6567cm

400450g

6.57.5 PSI

C区分

15歳以下女子

6163cm

340380g

5.56.5 PSI

空気圧換算表

区分

PSI(参考)

気圧(atm換算)

hPa換算値(目安)

男子用

7.58.5 PSI

0.530.60 気圧

530610 hPa

女子用

6.57.5 PSI

0.460.53 気圧

460530 hPa

A区分

5.56.5 PSI

0.390.46 気圧

390460 hPa

B区分

6.57.5 PSI

0.460.53 気圧

460530 hPa

C区分

5.56.5 PSI

0.390.46 気圧

390460 hPa

■ MIKASA と TURBO の規格比較

MIKASA規格の2号球はTURBO規格の3号球に相当しますが、MIKASA規格の3号球(女子中学生用)はTURBOには存在しません。国やメーカーによって若干の違いがあることも、水球の国際性を感じさせます。

メーカー

サイズ

対象

外周

重量

MIKASA/TURBO

5

男子一般・高校・大学

6871cm

400450g

MIKASA/TURBO

4

女子一般・男子中学

6567cm

400450g

MIKASA

3

女子中学

6163cm

340380g

MIKASA

2

小学生

5860cm

300320g

TURBO

3

小学生相当

5860cm

300g

■ ボールがつなぐ、水上のボールゲーム

水球は、足のつかないプールで、浮きながらボールを操作し、限られたスペースと時間の中で相手ゴールを狙うスポーツです。

相手をリスペクト、フェアプレーの精神を尊重し、ボールを奪い合い、得点を競い合う──その中心にあるのが、ボールそのもの。

この「ボール」の存在を意識し、理解することは、競技の奥深さを知ることにつながります。

技術や戦術の発展はもちろん、水球を観る・支える人々にとっての楽しみ方も、きっと広がっていくはずです。

■ 最後に

水球は、“水上のボールゲーム”という言葉にふさわしい、知的でダイナミックなスポーツです。

ボールの存在を見つめ直すことで、水球文化の新しい未来をデザインしていきましょう。

この記事についてのご意見・ご感想をぜひお寄せください。

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🔗参考文献・出典

日本水泳連盟『水球ハンドブック2023』

株式会社ミカサ「水球ボール製品情報」

MIKASA ブランドステイトメント

TURBO 公式サイト

スポーツシステムコーディネーター 角田壮監

「競技者本来の力を引き出す」ためにを理念に、グローバルシーンで実績を残している様々な競技のトップアスリートや競技団体のマネジメントやディレクションで培った「競技力向上のための組織づくり」をはじめ、社会にスポーツが持つ有益な効果を生み出すためにスポーツシステムコーディネーター、スポーツプロデューサー、プロジェクトコンサルタントとして、次世代ニーズを見据えた魅力ある競技スポーツシーンの創出に努めている。

KAKU SPORTS OFFICE MISSION

アスリート思考で心豊かな社会づくりをクリエイトする

KAKU SPORTS OFFICEは、「アスリート思考で心豊かな社会を創造する」をモットーに、競技スポーツに関わる個人・企業・団体の活動や事業を、的確な視点で分析します。そして、言語・文化・音楽・映像・活字といった多様な“シンボル”を活用し、人と人、組織と組織、企業と企業、人と組織・企業といったあらゆるつながりの中から、最大の相乗効果を生み出す組み合わせをコーディネート。新たな利益システムを構築するコミュニケーションコーディネーターとして活動しています。また、創業者・企画者としての精神をもとに、理念や目的を共有できるパートナーの育成や、持続的かつ自走可能な組織づくりを支援するシステムコーディネーターとしても貢献。さらに、競技者一人ひとりが本来持つ力を引き出すメンターとして、競技スポーツの発展にも寄与しています。

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